反物質Ⅲ

反物質Ⅲ 第14章 郁子の証言

男鹿の朝は、東京の雨とは違う匂いがした。海から上がる湿った風に、古い木造家屋の匂いが混じっている。慎一は玄関の前で少し立ち止まった。ここへ来るたびに、時間が戻るような感覚がある。茜と蒼真を連れて帰った日のことも、母が黙って茶を出した日のこと...
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反物質Ⅲ 第13章 残り火の器

空調の低い唸りに、検査室の端末が吐き出す微かな電子音が重なっていた。林月蓉は、表示された波形を最後まで見ずに画面を閉じた。青く沈むグラフの線は、期待していたほど荒れなかった。陳美蘭が蓮に近づいた夜の反応値と比べれば、むしろ冷えている。増幅は...
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反物質Ⅲ 第12章 モローの傷

添付ファイル名は、研究会の旅費精算書に見えた。EXPENSES_JUNE_REVISED.xlsx差出人の表示名は、共同研究事務局。本文は2行だけ。確認をお願いします。よろしくお願いいたします。ジュリアン・モローは、迷惑メール判定をすり抜け...
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反物質Ⅲ 第11章 真尋の部屋の灯

小さくノックをした後、真尋は蓮の部屋に静かに入りドアを閉めた。壁際のカーテンが、外からではなく室内から吹く冷気でわずかに揺れている。6月のサンクトペテルブルクは、まだ夜になりきっていなかった。ネフスキー大通りの向こうに白夜の薄明が残り、雨を...
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保護中: 反物質Ⅲ 第10章 二度目の湖

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保護中: 反物質Ⅲ 第9章 青い胎動

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反物質Ⅲ 第8章 記憶の湖

2047年秋も深まったロンドンで、ナディアはCERNから届いた再評価レポートを開いた。画面に浮かんだ「記憶の湖クラスター」という分類は、6月のウィーンの朝をそのまま呼び戻した。BIO-CORRELATION EVENT: MEMORY-LA...
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保護中: 反物質Ⅲ 第7章 工作線の夜

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反物質Ⅲ 第6章 イリーナ・モロゾワ

サンクトペテルブルクの夜は、雨の匂いを含んだまま沈んでいた。ネヴァ川の水面は黒く、岸壁に並ぶ灯りだけを細く伸ばしている。川沿いの旧研究棟は、外から見れば19世紀の石造建築にすぎなかったが、地下3階から下は、軍の地図にも載らない閉域施設へと姿...
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保護中: 反物質Ⅲ 第5章 ウィーンの扉

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